「コトバスタ」というサイトがある。
一見すると、よくあるまとめサイトの体裁で様々な言葉を紹介するサイトなのだが、よくよく見ていくと違和感に気が付く。そこには高確率で「存在しない言葉」が紛れ込んでいるのである。おそらく、生成AIによって無秩序に「単語」や「意味」を作り出し、それをチェックも何もせず完全自動で掲載しているのだろう。
私はこの手の「AIの暴走」的な現象が大好物である。よって今回は、そんなコトバスタに載っている珍妙な言葉たちの中から、気に入ったものをいくつか厳選してご紹介しようと思う。
単語集
死んだ人の霊 快活
さっそくだが、個人的に一番ツボにはまったものをご紹介。「この場所は死んだ人の霊。快活で活気があるな」というクソみたいな例文も味があって良い。
蒸し焼きしたら死ぬ
こんな高度な比喩表現まで収録されており恐れ入る。しかし、別に困難な状況に追い込まれていなくても、大抵の人間は蒸し焼きしたら死ぬだろう。
梁夢
競馬については詳しくないが、「梁夢」と書いて「桜花賞」とは読まないということだけは自信をもって言える。
joy 殺意
サイコキラーのジョイマン。
さ
そんな言葉聞いたことがないよ、さ。
んakan
「んakanという言葉が好きだ」って例文が許されるなら何でもアリじゃねえか。
田村ン
実はこのスクショの前段の意味解説も面白いのだが、なによりこの「田村ッちゃん」で笑いが止まらなかった。
動機の間の衝突 幽霊
読んでいるうちに、私も今までの人生で確かに「動機の間の衝突 幽霊」に遭遇したことがあるかもしれないと思えてきた。
死助詞
そういう種類の助詞の事かと思って読み進めていたのだが、食べる死助詞!?!?!?!?日本語は難しい。
火祭必殺じげもん
じげもん、誰?と思ったが、おまじないのようなものなのだろうか。
番外編
単語そのものというより、そもそも記事の生成に失敗しているパターン。
かたち
今まで散々存在しない単語ばかりを紹介してきたが、一方で確かに存在するはずの「かたち」という単語はundefined=定義されていないという。異世界に飛ばされたかと錯覚してしまう。
幽霊
な~んだ、今まで幽霊って言葉自体に怖いイメージを持ってたけど、ただの心霊現象なら安心だね!
篤信
AIに食わせたであろうプロンプトの一端が垣間見える。おそらく「あなたはWEBライターです。」みたいなことを言って記事を書かせたのであろう。
総括
生成AIはその特性上、ありもしないことを出力してしまう「ハルシネーション」という現象を起こしやすい。
AIが学習するデータに「○○という言葉の意味は△△です。」という文章は多くあるが、「○○という言葉は存在しません。」という文章は少ない。普通であれば存在しない単語について解説することはしないからだ。すると、学習データから確率論的に文章を生成する仕組みになっているAIは、存在しないものについても「説明」してしまうというわけである。
この他、存在する単語についても解説がかなり怪しいものが散見される。
生成AIが跋扈する昨今、このようなケースは「コトバスタ」に限らず多く見られるようになることだろう。
ネットでの調べ物の際は、信頼に足るソースであるかも含めてしっかり確認するべきであろう。自戒も込めて。